紫煙荘

SHI EN SO

 ラーメンと言えば、カレーと並んで嫌いな人を探すのが難しい食べ物ではないでしょうか。もともと麺の文化は世界各地に見ることができるわけですが、そのほとんどは小麦粉を原料としています。そうでないのは私の知る限りでは、ビーフンの類と日本蕎麦ということになります。まあこれについては他に譲るとして、今回はラーメンです。と言っても正しくは「中華そば」と言った方が良いでしょう。お若い方はともかく、昔は中華そばだったのです。出汁は鶏ガラで、あとは野菜のうま味が補っていたものと記憶しています。ベースのタレは、チャーシューの煮汁に、ニンニク、生姜、葱類などの野菜だけで作ったもの。麺はかん水たっぷりの黄色のつるつるの麺。「ああ、そうそう」と頷かれた方は中華そばのお好きな方ですね。今のラーメンなるものは、やたらうま味成分の強い物をその中に入れていますね。よそよりうま味が強くなければ客が来ないようです。そういう世の中のせいか、味覚と季節と心が一体となった大人が非常に少なくなってしまいました。

まあ、グチるのはこのくらいにして、伊那市に昔ながらの中華そばを食すことのできる店があるのです。JR伊那市駅から徒歩1分という場所に有るのですが、その辺りで聞けば誰でも知っています。細い路地を入ったところに有って、店内はどことなく大正ロマンを彷彿とさせる作り。インテリアでどうこうではなく、そのままなのです。ごく小さな、お尻が落ち込んでしまう椅子に座ると、ラーメン並350円、大盛り400円という文字が目に飛び込んで来て、次に申し訳なさそうにコーヒーの文字が見えてきます。そうなんです。ここは本当は喫茶店だったのですが、あまりにラーメンばかりが(私は中華そばだと思う)売れるため、喫茶店のメニューはコーヒーだけになってしまったようです。肝心のお味はと言うと、鶏ガラ主体のスープに若干豚が使われている程度。まさに昔の中華そば。思わず嬉しくなっちゃうさっぱり味です。だから大盛りを食べてももたれないし、後口が実に爽やかなのです。昼時の12時から13時の間は特に込み合います。働いているのは経営している年輩のご夫婦です。忙しいときはちょっと手伝って差し上げて下さい。器を片づけるとか、自分が注文したのはもらいに行くとか。それで訪れる時はちょっと注意して下さい。入り口に SHIENSO の看板があって 珈琲 の和名の看板があります。でもラーメンとは何処にも書いてありません。悩まないで下さいね。ここはれっきとした「喫茶店」なのですから。


定休日 不定休
営業時間  毎日 午前11:00〜18:00